いつかくる未来の、世界共通の紙幣を想像した。 キャッシュレス化はこれから先も社会に自然に浸透し、紙幣や硬貨などの現金を目にする機会はさらに少なくなっていくだろう。そんな時代が訪れたとき、宙ぶらりんになった紙幣ははたしてその存在をどう肯定するのだろうか。 私はこれからの紙幣の存在は、市民にとってのトークンのようなものへとうつりかわっていくのではないだろうかと推測する。ミレニアル世代と呼ばれる人々が社会の中核をなすにつれ、お金はかつてほどの執着を抱かれなくなった。「価値」あるいは「富」の生々しいメタファーだった紙幣も、長方形の紙というフォーマットだけを残した、何かがあった時のために持っておくお守りのようなものに近くなるのかもしれない。 お金としての歴史と印刷物としての歴史、両の側面から紙幣を考察し、実制作にいたるまでの過程を展示した。