大学院生対談

統合の大学院って何してるの?

チョウ ブンキン / 山口 敏樹

統合デザイン学科には、学部を卒業した後大学院に進学し、より専門性の高いデザインを探求している人たちもいます。統合デザイン学科を卒業して大学院に進学した山口さんとグラフィックデザイン学科を卒業して統合の大学院にやってきたチョウさんの2人に、大学院を選んだ理由や研究テーマについて話してもらいました。

– 美大を目指した理由について教えてください。

 

チョウ:うーん、この質問何回聞かれても難しい。上海の大学に通っている時は、全然美術関係とかではなく、英語とジャーナリズムの勉強をしていて、インタビューとかテレビの編集とかをやっていましたが、やっぱり自分の作品を作りたいと思い、多摩美のグラフィックデザイン学科に3年次編入しました。その後、統合デザインの大学院に。

 

山口:すごい。本当に色々な経歴を持っている人がいるんだ。僕が統合に入りたいと思ったのは、高校卒業する半年前の夏休みとかですね。元々無印良品が好きで、アルバイトもしていたんですけど、なんとなく「無印のデザインをしている人」と調べた時に、統合の学科長である深澤直人さんを知りました。あと、伊右衛門という緑茶ブランドについて調べたことがあったんですけど、そのデザインを永井先生がやっていて。そういう先生がいる統合って良いんじゃないかなって思って入りました。

– 統合デザイン学科の大学院を選んだ理由は何ですか?

 

チョウ:学部生の時に大学院の先生を選ぶのに調べていたら、佐野先生のグラフィックを見つけて。佐野先生のプロジェクトに入ったら新しいものが作れるかな?と思って統合の大学院に入りました。統合は、自分と違うことをやっている人と話す機会が多そうだったので。

 

山口:僕が大学院に行こうと思ったのは卒業制作の時です。自分がやっている作品があまり仕事に直接結びつかないようなことだったんですけど、デザインって社会性が求められるので、大学院まで行って、突き詰めないと難しいと思って入りました。それと、やっぱり菅先生のところでもう少しやりたいなって。

 

チョウ:社会の関連性が高い作品を作りたいということですか?

 

山口:というよりは、その接点を見つけたい

 

チョウ:実際はどうですか?

 

山口:見つけられてないですね。(笑)

 

チョウ:そうですよね笑 学部の時より社会が遠く感じませんか?

 

山口: それはありますね。確かに。

 

チョウ:山口さんは深澤先生と永井先生が統合にいるから入学したのに、入ったら菅先生のプロジェクトへ・・(笑)

 

山口:(笑)1・2年生の時に菅先生の出す課題をやるんですけど、それが面白くてちょっと感化されてしまいました。

– 2人の研究テーマについて教えてください。

 

チョウ:「独り空間」というテーマで、グラフィック系ですね。研究しているという感じではないんですけど、1人の時間でいる場所を想像して、ストーリーがあるアニメーションを作っています。独りというのは、例えば1人でエレベーターにいる時間とか、電車を待つ時間とか特別な目的がない時間を表現したもの。人の孤独感とかを表現したいなと。多分こういう意味がない時間も何か意味があるのかなと思って。コロナの時にずっと1人で家にいて、このアイデアが生まれました。1人お風呂に入って、いろんなことを考える時間が大事だと思って。

 

山口:1人の時間って大事ですよね。そういう時間がないと、人間って生きていけないんじゃないかなって。作品のことをずっと考えていても、疲れちゃうというか。ボーッとしているとふっと気づくことがあったり。

 

チョウ:そうそう。人生のメインはそういう意味がない時間じゃん。だから意味がある時間にしたい。あと最近3Dのソフトウェアもやっていて、よりリアルな感じが出ると思うから、3Dで映像作品作りたいと思っています。それから、3Dプリンターでモデルを作りたいです。まだ使ったことのない機材が大学にはいっぱいあるから、使わないと勿体無いなと。

山口:面白い機材がいっぱい無料で使えますもんね。僕の研究テーマ・・・。卒業制作は動いている光が投影されている一方で、投影されていないような質感が生まれるのがいいなと。それを使って何ができるか突き詰めたくて、大学院に進んだんですけど。今はプロジェクターを使うのではなくて、例えば水とか空気とかそういう形が変形するようなものの「変形」についてちょっと知りたいなと思って。流体力学とかを勉強するのは、大変じゃないですか。それよりは、水と空気とかっていうのをモチーフにした作品を作ることで、その物性について理解できるのはあるかなと思って、そういう研究をやっています。

 

チョウ:物理的なものに興味がある?

 

山口:光に物性が出るっていうのは結局光が何かのように見えるってことだと思うんです。それってどういうことなんだろうって思って。例えば、水を水っぽいと思うってどういうことなのか。それが分かれば、自然とその光に物質感を与えるっていうこともできるんじゃないかと思って。学部生の時よりも社会と離れているところを研究しているんですけど。笑


– 統合デザインとは何でしょうか?また、高校生に一言お願いします。

 

山口:統合デザインを言語化するのは未だに少し難しい。色々な人がいるからそれが1番良いところだと思います。入試方式とかも絵を描いて入る人もいれば、勉強だけで入る人も色んな人がいるので。先生もプロダクトデザイナーもいれば、グラフィックデザイナーもいるので。入ってからあんまり目標がなくても、ここに入れば自分の興味のある場所を見つけられるっていうのは、すごく強く感じます。自分も入った時と興味はだいぶ変っちゃったんですけど。

 

チョウ:山口さんが言ったように色んな人がいるから、色々な作品の表現方法に挑戦できる。ポスターとか平面的なものの他に、アニメーションとか、立体物とか別の媒体を使ってる人が多くて、良いインスピレーションが得られます。そして、自由な雰囲気なので、アート作品を作りたい人も統合に来たらいいなと。

 

山口:やっぱり1つにデザインって言っても色々な分野が組み合わさっているから、色んな角度の作品が作れる可能性に溢れているところが多分1番統合のいいところですね。

チョウ ブンキン (ZHAO Wenxin)

統合デザイン学科大学院2年生

1996年生まれ、中国上海育ち。2018年上海外國語大学ジャーナリズムとコミュニケーション学院卒業2019年来日。2021年多摩美術大学グラフィクデザイン学科卒業。

 

山口 敏樹 (Toshiki Yamaguchi)

統合デザイン学科大学院1年生

1998年東京都生まれ。2022年統合デザイン学科菅プロジェクト卒業。統合デザイン学科卒業制作賞2022・金賞を受賞。現在、大学院デザイン専攻( 統合デザイン研究領域 )1年。大学院に通いながら、「光の物質感」とデザインに関する研究に取り組む。