立体物をインクに浸し、紙に押しつけて形を写し取る。魚拓などでよく用いられる転写手法だが、これを行うたびに対象の角度を1°ずつ変えていき、1回転分の「拓」を連続した映像として再構成すると、そこに奥行きのある立体像が現れることに気づいた。「拓」はその仕組み上物体の最も手前の情報しか記録できないが、それゆえに、この映像は視覚よりも触覚に近いものとなる。私たちの視覚は奥行きを把握できるが、それはさまざまな要素を用いて補完した情報に過ぎない。これは私たちが普段見ているつもりになって本当は見えていない世界の形を、新しい手法と共に再発見する試み。