統合デザイン学科では、3年次から「プロジェクト」と呼ばれる目玉科目を履修します。日本を代表するデザイナーである教員陣が開講しているプロジェクトを選ぶ、嬉しい悩みに直面することになります。みんなどんなことを考えてプロジェクトを選び、それぞれ何を学んでいるのか、この春からプロジェクトを履修している3年生の有本さん、片岡さん、上野さんの3人に話してもらいました。
– プロジェクト選ぶのは迷いましたか?
片岡:私は受験生の時にオープンキャンパスに行って永井プロの作品を見て統合に行きたいって思ったので、1-2年の時からずっと私は永井さんのプロジェクトに入って勉強するんだていう気持ちはずっとありましたね。最終決定の3日前に急に別のプロジェクトが頭によぎったんですけど、でもここまでずっと思ってきたのに急に他のプロジェクトに行っても自分はうまくいかないなって思って。そう考えると意外とあんまり考え方とか興味のある分野って変わらないんだなって思う。色々経験した上で変わらない興味の方向性を自覚できるのは統合ならではかも。
有本:自分は深澤直人プロジェクトと中村勇吾プロジェクトで迷って、深澤さんのところを選んだ。デザインの中ではグラフィックの分野が好きではあるけれど、平面に止まる必要はないなと思ってこの2つで悩んだ。深澤さんを選んだのは、今、立体物に意識的に触れないと一生触らないだろうなと思ったから(笑)あとは圧倒的完成度を目指すプロジェクトの理念にも共感したから。
上野:私もプロジェクトは迷った。割と平均的に悩んで、最終的に中村先生のところと迷ったけど、今まで少人数のところにいた経験が多いから、少人数のところの方が性に合ってるなっていうのと、ScrapBoxっていうツールを卒業生含めてプロジェクトメンバーみんなで共有できる所に惹かれて菅プロにした。
– 各先生の印象について教えてください
片岡:授業での永井先生はドライなんだけど、でもちゃんと私たちのこと見てくれてるなっていうところは授業の垣間で見えてくる。だから少し距離が遠くて寂しい気持ちもあるけど、でもそれが永井プロのいいところでもあるのかなと思う。あと、永井先生オーラみたいなのがある(笑)
有本:めっちゃあるー。渋谷で永井先生を見かけた時すぐ分かったし、周りレッドカーペット敷かれてるようなオーラ出てた。
片岡:岡室先生は私もまだ把握しきれてないんだけど、意外と永井先生より岡室先生の方がズバッという印象。生徒の作品というより本当にデザイナーの作品としてコメントしてくれることが多いかもしれない。だから岡室先生と永井先生で全然意見が違うこともあったりとかする。面白い。そうえば、永井先生と岡室先生も授業前に爆速でプラジッタ(カレー屋)に入っていくのみた事もあったな。
有本:佐野先生も行ってるらしいよ。
片岡:確か菅先生御用達だよね。菅さんは1、2年生の時も私たちはお世話になってたけどギャップはあった?
上野:私1、2年生の時一回も担当として当たったことがなくて、怖そうっていう先入感強めでプロジェクトに入って実は今もまだその印象は残ってるんだけど、講評とかはどんなものを持って行っても絶対面白いところを探してくれて、私がよくわからないところをめちゃめちゃ言語化してくれて、1言ったら10返ってくるみたいな感じ。あとすごく面倒見がよくて優しい。すごく。
有本:深澤さんは世界的プロダクトデザイナーだから立場的に近づきにくい存在で、初回授業に自己紹介で1、2年で作った作品をプレゼンした時は「深澤さんに僕の自己紹介…?それは深澤さんにとって有意義な時間なのか?」って思ってしまったなあ(笑)だけど、すごくお茶目で冗談も言う。でも作品のこととなると形とか素材とか微々たる違和感にすごく鋭くて学生の作品であろうと何であろうと「ここはこうしなきゃいけないよ」って。目がやっぱり鋭い。長崎先生は深澤さんの事務所で働いているけれども意外と考え方が違ったり課題に対する解釈とかも違ったりしてて、例えば今、「生け花」って言う課題をやってるんだけど長崎先生は「生花」だと思ってたなんてこともあったりする(笑)。それと、お昼は深澤さんと長崎さん、学食をいつも食べてるよね。世界の深澤さんでも学食食べるんだーって。火曜日の上野毛の中庭は結構最強だね。勇吾さん、深澤さんと長崎さん、柴田さんが学食でご飯食べてるっていう。
– 各プロジェクトの特徴について教えてください。
片岡:永井プロは問題解決とか商品開発、ブランディングみたいなのが主な課題の内容なんだけど、1、2年ではプロダクトならプロダクトだけ、グラフィックならグラフィックだけってやっていたところから考えるとすごく雰囲気ガラッと変わったなーっていう感じはあるかも。問題解決っていう大きい括りの分野だから、一人一人が自分の得意な領域に寄せられるって言うところも違う。実際に外部とのコラボや依頼があるから、今までよりずっとデザインが、社会が近くなった印象があるかな。あと「社会を良くする」っていうのが永井先生の話で毎回毎回出てきて、ちょっとの工夫で社会を良くするということが私たち永井プロに求められてることだと思う。
上野:菅プロは作るものを指定される課題はなくて、新しいモノだけに留まらず、新しい仕組みを作ってねっていう新しい表現方法を探求する感じのプロジェクトだから、作るもの自体は本当に自由でかなり頭ひねってやらなきゃいけない感じがやっぱり1、2年生とは違う。あと毎年絶対違う課題を出されるから直接的な参考になるものはなくて、自分でいろんな参考になるものを探して必要な要素を取り出して作ってくしかないというところは難しくなってる。
有本:深澤プロも毎年違う課題が出ていて、参考にするものが学校内にはない。それは逆にやりやすい気もする。その分もがかないといけないけど。
片岡:それに前例があるとそれに引っ張られることあったりするからね。確かにやりやすいかも。新しい課題は割と面白いよね、どっちの方がやりやすいかと言われると難しいけど。
上野:あと月一回菅先生とマンツーマンで面談する時間があって、各々課題とは別に”研究テーマ”というものを持っていて、興味のあることについて先生と一緒にとにかく掘り下げる機会があるんだけど、「これ面白いと思ってるんです」って話すと「あ、じゃあこの本とかあるよ」って言ってくれたり、ただ面白いことについて先生と話す時間があるっていうのは結構特徴的かな。
有本:深澤プロはまず課題文がすごく難しい。物にするのは一生懸命に向き合っていけばいいんだけど、課題文を解釈して自分の作品にもってくるのが一番難しいな。あと1、2年では割と作るものが決まっていたけど、深澤プロになると概念を形にして視覚化しなさいみたいな課題になるから、その概念を読み解くのが難しいっていうのが一番の違いかな。深澤プロは一個の課題にかける時間が長くて、4〜5週間ぐらいだから他のプロジェクトに比べるとだいぶゆっくりのペースでやってるんだけど、立体物を作るから結構時間がかかるのとさっきも言ったけど、深澤プロジェクトで掲げてる理念として「圧倒的完成度」っていうものがあるから、モックをたくさん作ることによって最終的に完成度を出せるって言うのはゆっくりな課題の分いいことなのかなっていうのは思う。
上野:とにかく大量に早く手を動かして作れっていうのとは違うね。
有本:でも他のプロジェクトの量をとにかく出せみたいなスタンスも羨ましいな。